お口の健康と全身の健康を守ろう

80歳で20本の歯を残すことができますか?

「8020(はちまるにいまる)運動」という言葉を聞いたことがありますでしょうか? 8020運動とは「80歳になっても20本以上の歯を保ちましょう」という目標を掲げ、厚生労働省と日本歯科医師会が推進している運動です。(60歳以上では24本を目標)しかし、日本人の寿命が80年にまで延びた今日でも「歯の寿命は45~60年程度」となっています。つまり多くの人は80歳になった時、(平均ですが)8本から10本程度しか歯が残っていないということになります。20本の歯があればなんでもおいしく食べられますが、5本程度だとバナナやうどんなど、柔らかいものしかかみ砕けません。入れ歯を利用すれば一応かむことは出来ても、美味しさという点ではかなり劣ってしまうようです。また、栄養面にも影響が出ます。高齢になればその分だけ免疫力は弱まり、心肺機能や修復力も低下します。

プラークコントロールが出来ていないと歯を失う原因に

バイオフィルムを作りながら歯周病の原因菌は、歯と歯ぐきの「くっつき」をはがしていき、奥へ奥へと入り込んでいきます。この「歯周ポケット」とよばれる歯と歯ぐきのすきまができてくると、ブラッシングでも歯ブラシの毛先が届かなくなってきて、歯垢(プラーク)が残ってしまうようになります。こうして歯周病の原因菌は歯周ポケットの中でどんどん増殖して毒素を出します。

また、歯周ポケットの深い部分に歯石もできてしまうようになります。歯石は多孔質であり、細菌がへばりつき、さらに増殖しやすくなります。やがて歯を差させる骨(歯槽骨)が、細菌の感染から逃げるように退縮していき、歯を支えられなくなり、最後には歯は抜け落ちてしまうようになります。これらを予防するためには、ご自身ではプラークや歯石を除去し切れない部分もキレイにするプロによるクリーニングが大切になります。

プラークは万病の元であることがわかってきています

プラークを放置すると、むし歯や歯周病の元になりますが、それだけではないのです。実は「誤嚥性肺炎」「気管支喘息」などの呼吸器疾患の原因や、になることもあります。血管の壁に付着して「動脈硬化」を悪化させたり、「心筋梗塞」を引き起こす要因になるといわれています。また、「糖尿病」とも密接な関係があることもわかっていますし、「早産」との関りもわかってきています。
歯周病では、歯肉が炎症を起こして出血、あるいは膿が出るなどに至った時、歯周病原因菌が、血液を通して体内に入り込み、全身を駆け巡ることがあります。そのことが要因となって重病になる場合があることがわかってきているのです。たとえば「プロテアーゼ」という酵素を出して血漿を凝固させると、動脈硬化のリスクに。この動脈硬化は脳梗塞や心筋梗塞に結びつくことは良く知られていますが、米国歯周病学会では歯周病の人が心筋梗塞になるリスクは、そうでない人に比べ3倍近くになることを報告しています。間違って唾液を気管に吸い込んでしまうと、その中にいる歯周病原因菌によって、誤嚥性肺炎を引き起こすこともあります。また、赤ちゃんはお母さんの羊水にある「プロスタグランジン」が一定量になると生まれますが、お母さんが歯周病に罹ることによって、このプロスタグランジンが急増し、早産を招くこともあります。その確率は健康な人の4倍以上といわれています。さらに歯周病と糖尿病は密接に関係しています。糖尿病の人は、歯周ポケットの中の細菌を食べてくれる白血球の働きが弱いため、歯周病が悪化しやすくなりがちです。一方で、歯周病が改善されることで、血糖値が改善されるという報告もあります。

日本人の30代の80%は歯周病

日本人の歯を失う原因の1位はむし歯ではなく「歯周病」です。この歯周病は10代から初期症状がみられることもあり、成人のほとんどが歯周病といっても過言ではありません。日本人の場合、歯周病で歯を失うケースは30代で増えはじめ、40代半ばではむし歯で歯を失うケースよりも、歯周病で歯を失うケースの方が多くなる傾向にあります。